~ひとを想う~ 集尿器(収尿器) Mr.ユリナーの誕生・開発ストーリー

なぜ、包装機器から排泄用具の異分野に参入したのか

商品化のきっかけから、開発ストーリーそして誰にも負けない商品への熱い思いを告白

シリコンレシーバー(受尿器)をズボンの中にかくすという新たな発想で、排泄ケアにイノベーションを起す「Mr.ユリナー」。独創的なコンセプトには、考案者そして開発者の熱い思いが込められています。

ユーザーニーズから排泄ケアのイノベーション

Mr.ユリナー(ミスターユリナー)が誕生した経緯は?

 

頻尿が原因で試作したMr.ユリナーの起源となった手作り尿器
  • 尿もれ・頻尿に困った当事者が考案
  •  それはある日のこと。突然、おむつ生活を強いられた74歳のKさんは、羞恥心や屈辱感、絶望感など複雑な感情とおむつの気持ち悪さゴミの多さに悩まされていました。
  •  なんとかして改善したいと思ったKさんは、ありとあらゆる市販の排尿用具を自身で探し、そして購入し試しました。しかし、いまいち自身にあう尿器が無いことに苛立ちを感じていました。どうにかして今の状況を変え、昔のように「トイレを気にせず皆と同じようにアクティブに外出したい!」気持ちはあきらめきれず。悶々とした日々を過ごしていました。
  •  そんな中、いつものように夕食の時間になり、食卓に行くと、テーブルの上にさりげなく置かれた「マヨネーズチューブ」に目が留まり、それを見た瞬間にKさんは電光のように頭に閃きました。「このマヨネーズチューブをスパッと切って、ジョウゴのように集めてしまえばいいじゃないか?」と。それ以来、買ったマヨネーズの数はマヨラーを超え、食べて空にして試作して。何度も何度も試作・改良を繰り返す。失敗しては、また試作。こうして2年が過ぎ、世界に一つだけのマヨネーズ尿器が誕生しました。
  •  こうして作った尿器は独自創造性が認められ特許を取得(左)。そしてまわりの友人に配ったところ、「実はわたしも誰にも言えず相談できずに困っていた」とマヨネーズ尿器を愛用。クチコミでファンが増えていきました。

 

Mr.ユリナーが商品化に至った経緯・理由は?

排泄トラブルの現状朝日産業のものづくり精神・コンセプト
  •  友人の紹介で考案者Kさんと知り合い、なんとか商品化できないだろうか?と相談をいただきました。そして、この話を聞いたところ「排泄トラブルの問題は人には言いにくい悩みで、潜在需要があるだろう」と感じ、排泄分野の実態調査を始めました。
  • 50歳以上の4人に1人が排泄トラブルを抱えている
  •  調査によると、50歳以上の4人に1人が頻尿や尿漏れなど何かしらの排泄トラブルを抱えているという。健康長寿延伸に向けて重要なことは厚生労働省も掲げる健康 寿命延伸三原則「食事(73.0%)」「運動(71.4%)」「睡眠(74.9%)」と認識する一方で、「排泄ケア(45.8%)」と、半数を割り、最も回数の多い排尿ケアに対する意識が低い。排泄は尊厳や羞恥心に深く影響し、適切なケアの有無で社会との交流も変化。排泄ケアの実施者・非実施者では生活の満足度にも差が出ている。
  • 自分だけの問題でなく対処もできず悩んでいる
  •  また、自分が抱えている問題は世間一般ではないという認識、つまり「自分だけの問題だ」と誰にも言えず、かといってこういった解決の情報もなく、誰にも言えず一人で悩んでいる状況であることがうかがえる。排泄トラブルによって生活に対する意識が低下し、健康的・精神的に悪影響を及す。このことが健康長寿延伸にとって見えない壁となっているのではないかと。
  • 包装・衛生機器から排泄用具への新分野へ
  •  こうやって、考案者Kさんの実体験からマヨネーズ尿器を経て「排泄トラブルも健康長寿延伸を阻害している潜在需要」x「経験者が発明した従来に無いケア」x「製品化を待ち望む試用者の声」で、ひとを想うものづくり精神に火が灯る。マヨネーズ尿器の商品化に社会的意義を強く感じる。一人でも多くの方に喜んでいただけるなら本望だと。こうして包装・環境衛生機器からは遠くかけ離れた新分野へ参入しチャレンジすることを決断しました。

Mr.ユリナーの開発に苦労した点は?

Mr.ユリナー開発経緯と部品の画像
  • マヨネーズ尿器(自助具)からの製品化
  •  毎日快適に使用していただくために大切な事の一つには、「ひとを想うものづくり」を商品に詰めこむこと。簡単脱着、簡単洗浄、いつでも、どこでも、誰でも。気軽に使え、生活の一部となりますようにと想いを込め、肌にやさしいシリコン製のレシーバー、目立たなく強力に固定するクリップ、すぐに簡単に外して捨てることができるワンタッチのキャップ、足にフィットするカーブをもたせた収尿ボトルなど細部にわたって議論し設計、試作そして試用、検証を繰り返しながらプロジェクトを進めました。
  • 気軽に使える トイレらしくないトイレ 尿器らしくない尿器
  •  「おむつ」や「失禁パンツ」「チョイ漏れパッド」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。我々開発チームでも「排泄って何?」「排泄用具って何?」といったようにMr.ユリナーの方向性に悩み、日々討議し、かなりの時間を費やしました。今日は仕事が忙しいから、トイレに行くのが面倒だからと言って、「おむつ」を着けよう!隣にポータブルトイレを置こう!と考えるのでしょうか。やっぱり何か原因があって問題があるから「おむつ」や「排泄用具」を使うのではないでしょうか。誰もが気軽に明るく手軽にそして堂々と使えるトイレ。このコンセプトにたどりついてからは開発スピードがあがり、疾風の如く製品に向けて進んでいきました。

受尿器はどうして「シリコン製」にこだわるの?

  • たどりついたのは医療グレードの抗菌シリコン
  •  採尿部品の受尿器(レシーバー)は、デリケートな陰部に直接触れます。そのため受尿器に必要とされる条件は、装着による肌へのストレス、そしてスキントラブルのリスクを極力低減し、快適さを保つ。すなわち、形状はもちろんのこと、材質や質感も大切ということ。その最適解を見つけるために、マヨネーズチューブと同じ材質のポリエチレン(PE)はじめプラスチック(ABS)、塩化ビニル(PVC)はじめ様々な材質で試作そして装着によるストレス試験を行いました。こうしてこだわり続け、たどりついた材料が医療グレードの抗菌シリコンでした。
  • シリコンの特徴
  •  一般的にシリコンの耐用年数は10~13年といわれ、耐久性・耐熱・耐寒性に優れ-50度~280度の温度条件で使用できます。無毒であり科学的に安定した物質であるため、工業用途から食品分野、医療分野まで幅広く使用されています。特にMr.ユリナーで使用している医療グレードのシリコンは有機的可塑剤がほとんど含まれておらず生体適合性に優れています。
    硬くもなく柔らかすぎず。人肌への相性を重視したソフトでサラサラしたシリコン製の受尿器を体感してください。
こだわりの採尿器レシーバー

Mr.ユリナーのデザイン・仕様に関して工夫した点は?

尿器とは思えないパッケージ
  • 排泄は自然な生理現象であって格好悪いことでも恥ずかしいことでもない
  •  そもそも、排泄は生きていく上で必要不可欠。自然な生理現象であって、格好悪いことでも恥ずかしいことでもない。生まれた赤ちゃんは基本的におむつに排泄。そして物心がつき排泄の自立をしている頃には、おむつを卒業してトイレで排泄。そのトイレは誰にも見られない一人の環境。脱ぎ方や出す姿勢そして清拭の仕方まで全てにおいて、誰かと比べるわけでもなく、何が正しいかもなく自由に、そして気持ちよく排泄する。
  • 誰が望んでおむつに排泄したいと思うのか
  •  それがいつの日かおむつを強いられる生活に逆戻り。誰が好んでおむつに排泄したいと思うのだろうか。本当は、できる限りトイレでゆっくりと、そして気持ちよく排泄したいと思っているに違いない。いつも清潔でいたいと思うのは私だけではない。やっぱりトイレが好きである。
  • Mr.ユリナーは「トイレ」である
  •  Kさんも同じ。どうしても、いつまでも「トイレ」に排泄したいと強く思い、いつでもどこでもできる「トイレ」を考案したという。「俺もおむつをするようになった」「シモの世話をしてもらうようになったら情けない、もうおしまい」と聞かれるように、排泄は尊厳や自尊心に深くかかわるデリケートなことであり、いつも過ごしていたトイレの時間はできる限り失いたくない。誰にも言えず、相談できずに悩みを抱える方の理由も理解ができる。
  • 排泄は「汚い・臭い・暗い」3Kのイメージを払拭したい
  •  排泄の分野へ参入すると決め、開発者の思いや排泄に対する考え方を聞いているうちに、様々なことを感じるようになる。「食べることは、今日は何食べようかと迷うほど情報があるのに、出すことには情報が少ないのだろうか」「ドラッグストアーやホームセンター売り場はおむつばかり並んでいるのか」「出すことの選択肢がもっとあってもいいのではないか」「漏れたらおむつの言葉はどこから来たのか」「排泄のイメージはどうして暗いのか」など。
  • パッケージまでこだわる排泄用具
  •  こういった事を感じるうちに、トイレ・排泄のイメージを少しでも払拭したいと思いがつのる。気軽に使えて明るく楽しくなるイメージにしようということで、専門デザイナーU-Proへ依頼。今までの排泄に対する恥ずかしさや暗いといったイメージを払拭するため、排泄用具でここまでこだわったデザインは無いだろうというくらいのこだわりをもち、新規参入といったまったく異なった視点で商品のカラーリングそしてパッケージをデザインした。
  • Mr.ユリナー(ミスターユリナー)の語源
  • Mr.ユリナーは男性用のトイレ。Mr.=男性に、英語のユリナルurinal(小便器、小便所)をかけあわせ、Mr.ユリナーが誕生しました。人の名前のようで、お出かけの友にもうひとりの相棒が増えたような感覚で、ご愛用いただけると幸いです。

完成までの3年間を振り返って一番大変だったことは?

Mr.ユリナー装着イメージ
  •  レシーバー(受尿器)の形状の開発・設計
  •  肌に直接触れて、装着する。新規参入のうえ、ノウハウも無し。ましてどこを探しても、最適な形状のデーターや情報がどこにも無い。付け心地を左右する一番重要なところの最適形状を見つけ出すことに最も時間を費やし、何種類もの形状をつくっては、何人もの方にお願いし、試しにいれていただく。途方も無く繰り返し繰り返す。その結果、いまの形状にたどりつきました。
  •  めざしたのは、付けていて気にならない。圧迫感なく、気持ちの良い排尿感。いつものトイレで、いつものように自然におしっこする感覚がほしい。こうして世界に一つだけのレシーバーが誕生しました。

これからの展望|Mr.ユリナー開発者インタビュー

集尿器Mr.ユリナーがめざす健康長寿延伸
  •  何よりも嬉しいご愛用者からの感謝のお言葉
  •  普段はおむつを着けて排泄は介助が必要な車椅子に乗った障がい者の方が就職活動をしていたけれども希望先ではどこも「排泄は自立していることが条件」で今のおむつ交換介助では就職先が見つからず。しかし、トイレの介助が不要となるMr.ユリナーを使うことで排泄の自立をして就職できたという手紙。身体は元気、トイレが近いだけで嫌々おむつを使い、自信を無くされていた方が、普通の生活に戻れたという手紙。前立腺がんや、前立腺肥大の手術後の尿漏れや頻尿の対策に悩んでいた方からの嬉しい手紙。また、改良点を教えていただいたり、改良の試作品を、わざわざ送っていただいたり。皆様の生の声をお聞きしながら、ユーザーと共に進化を遂げ成長しました。
     そして訪問させていただいた方から何度もお聞きした「やっぱりトイレでおしっこしたい」「Mr.ユリナーはトイレだ」。おむつからユリナーに切り替えたばかりの、慣れないうちは失敗してもあきらめず「やっぱりユリナートイレでおしっこしたい。おむつに戻りたくない」といったユリナートイレを使いたいというニーズ。こういった暖かい支えは、Mr.ユリナーを世に送り出した社会的存在意義を実感する瞬間であります。それは忘れないし、忘れてはいけません。
  •  ユーザーニーズから排泄ケアのイノベーション
  •  排泄にかかわるメーカーとして、第一にお客様の生の声を大切にする。全ての答えは現場にあり、ユーザーにある。そして、ひとを思うものづくり精神を持ち続ける。Mr.ユリナー、兄弟分のダンディユリナーはじめ、世界に一つだけとなる様々なジャンルの排泄用具を今後も継続して開発していきたいと強く思っています。誰もが生活に欠かせない排泄。美味しく食べて、気持ちよく出すために。